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2024年04月11日 お悩み買い取り

お悩みno.6: 身分証を失くしてしまった住所不定の久保さん

皆さんは身分証を失くしてしまったら、どうしますか?

「役所などで再発行すればいい」と思うかもしれませんが、再発行をするためにも本人確認のための書類が必要です。

キャッシュカードなどがあれば再発行できる場合はありますが、もし全てが入った財布を落としてしまと再発行の難易度が一気に上がってしまいます。

さらに、ネットカフェで生活しているなど「住所不定」という条件も重なると再発行はかなり難しくなります。

弊社はホームレス状態の方からたくさん相談をいただきますが、実は「身分証がないので仕事が見つからなくなった」というきっかけでホームレス状態になってしまう方も多いです。

 

生活のお悩みを3,000円で買い取り、記事にすることで社会問題を発信するお悩み買い取りプロジェクト

今回、相談にいらっしゃった「久保さん(仮名)」は、身分証を失くしてしまった30代の女性です。

始終涙を流しながらお話を聞かせてくださいました。

身分証を失くしてしまいましたが、住所不定なので再発行に行けません

──久保さん、今日はどうぞよろしくお願い致します。

久保:よろしくお願い致します。

──ああ、涙が出ている!大丈夫ですか?

久保:すみません、涙が止まらなくて。

──ゆっくりで大丈夫ですよ。インターネットで検索してうちへ来てくださったってことでしたね。

久保:「身分証なしで働ける仕事」というワードで検索して見つけて、「ここなら安心して相談できそうだな」と思って、来ました。

──いま身分証がないんですか?

久保:そうなんです。荷物の受け取りでマイナンバーカードを出そうと財布を開いた時に「あれ?ない!」って気づいて焦って…

──それは焦りますね。

久保:今はお付き合いしている人の家に居候しているんですけど、住所不定なので再発行の手続きにも行けなくて…

──他に免許証とかキャッシュカードとか何か名前が確認できるものはありますか?

久保:キャッシュカードと年金手帳はあります。

──なるほど。ちなみにパートナーさんの家に住所を置かせてもらうのは難しいですか?

※画像はイメージです。

久保:ちょっと難しいですね。
実は一年前まで母と暮らしていたんですけど、母が体調を崩して鬱になってしまって…すみません、涙が…

──ゆっくりでいいですよ…!

久保:姉はいるんですけど、15年以上前に音信不通になって、母や家のことは全部一人でやっていたんです。でもいろいろな支払いもままならなくなって、いっぱいいっぱいになって、母を残して家を飛び出しちゃったんですよ。

──その後、今お付き合いしているパートナーさんのお家に行ったんですか?

久保:そうです。彼の家にいざ行ったんですけど、彼には子どもがいて一人親なので「住所を置かせてほしい」とは言いづらくて…

──お母様は今は施設にいらっしゃるんですか?

久保:多分一人で暮らしてると思います。飛び出した後に結構連絡がきたんですけど、全部無視したんです。

──飛び出した手前、連絡を取るのも気まずいですよね…。

久保:でもどうしても気になって一度家を見に行ったら引っ越ししていました。たぶん周りの人が助けてくれて一人で暮らしてるんだと思います。

母からお金をせびられ、いっぱいいっぱいになって、家を飛び出しました

──お母様との関係はどうでしたか?

久保:良くなかったです。

もともと私は正社員で働いていて、母も働いていたんですけど、母が怪我をして働けなくなってしまいました。それで母が鬱になって、家から出ない生活になってしまって…

──怪我がきっかけだったんですね。

久保:私は私で職場の人間関係で悩んで2年前に正社員の仕事を辞めて、その後は夜の仕事をしてたんですね。
それでお金は家に入れていたんですけど、「自分の体が悪くなったのはお前のせいだ」とか昔のことを蒸し返して文句を言われたりしました。

──それは大変ですね…。

久保:文句だけじゃなく、顔を見れば「お金お金」ってせびられて、いっぱいいっぱいになってしまって、家を出たんです。

──お金まで…お母様に結構お金を渡していたんですか?

久保:「毎月10万円は必要だ」って言ってくるので、給料の半分は母に渡してましたね。家賃や光熱費も全部私が払ってたので、かつかつでした。

給料が低い時も同じぐらいの額を取られていて、手取りが10万円台の時も「そんな額じゃ私足りない」って言われていました。「え?私の手元に残るの1万ぐらい?」っていう時もありましたね。

──ええ!貯金はまずできないですね。

久保:貯金はできないですね。「ああ、お金がない…」って思いながら過ごすことの方が多かったですね。

──将来のことを考えると不安になりますね。

久保:そうなんですよね。

でも口を開けば「お金お金」って母から言われてたので、当時の私は「お母さんにお金を渡さなきゃ」っていう考えしかなくて、頭がちょっとおかしくなってたかもしれないです。

──洗脳に近いですね。

久保:そうかもしれないです。生活費のために借金もしてしまいました。

母が怪我してから働けなくなって、自分一人だとかつかつになってしまって。
「借りて上手く回していこう」って思ったんですけど、結局うまく回らなくなってしまいました。

※画像はイメージです。

市川:増やして返さなきゃいけないから、自転車操業になりますよね。

久保:そうなんです。

──お姉様とは全く連絡はとっていないんですか?

久保:15年以上音信不通ですね。
姉がヒステリックで、20歳ぐらいの時から昼ドラに出てくるようなドロドロした関係なんです。

父の遺産の相続の関係で、姉に一度会わなきゃいけなかったんですけど、「お前とは二度と会うか」って言われて、今はもう電話番号も分からないです。

──すごい剣幕…どうしたんですかね?

久保:姉いわく、親が私ばかり可愛がっていたっていうひがみが未だにあるみたいです。
でも、姉は親のお金で免許を取らせてもらったり、他にもお金を出してもらっているから、私は私で腑に落ちないんですよね。

──どちらにも言い分があるんですね。

不安でパニックになっていましたが、前に進める気がしてきました

──そうすると今頼れるのはパートナーさんだけでしょうか?

久保:そうなんですよね。もう1年弱居候させてもらっています。

──パートナーさんは「家にいていいよ」っていうスタンスなんですか?

久保:私が「早く出ていくね」とは言ってるんですけど、「いていいよ」とは言ってくれてますね。

──優しい方なんですね。ちなみに家賃や生活費は入れているんですか?

久保:生活費として1万円を納めています。彼から「払わなくてもいいよ」って言われたんですけど申し訳ないので、単発バイトで入るお金を遅くなっても納めるようにはしてますね。

──パートナーさんとはずっと関係を続けていきたいですよね。

久保:そうですね。子どもが大きくなってそのまま縁があれば一緒にいたいなと思ってますね。
一度別れ話も出たんですけどね。

※画像はイメージです。

──何かあったんですか?

久保:多分彼は一度私の母に会ってるんですよ。母の話を聞いた後に「別れよう」って言われて、私も「分かりました」って言って、そのまま出て行こうとしたんですけど、「私の話を何も話を聞かずに一方の話だけを聞いて決めてごめんね」って言われました。

だから母の口からいろいろ聞いていると思うんですけど、その一件後は一切聞いてこないです。

──パートナーさんはいきさつを理解した上で久保さんを家に住まわせてくれているんですね。

久保:ただ、私からは直接説明していないので、最近身分証とか借金のこととかを考えてパニックになっていたんですけど、「どうしたの?」って聞かれても、「大丈夫」としか言えなくて…

──難しいですけど、パートナーさんと関係性を深めていくつもりなら、隠し事をせず話した方がいいかもしれませんね。

久保:やっぱりそうですよね。

──あと、久保さんは身分証になり得るものもいくつかお持ちなので、マイナンバーカードの手続きも借金のことも役所で相談に乗ってもらえると思います。
ちなみにパートナーさんの家は持ち家ですか?

久保:持ち家ですね。

──それならよかったです。持ち家なら住所を移しやすいので、マイナンバーの手続きをしやすいと思います。単身用の賃貸に勝手に住所を移すと問題になりますけど、持ち家なら関係ないそうなんです。

久保:ただ、一人親世帯への手当の通知をこっそり見てしまって、「パートナーとか一緒に生活をしてる人がいるとダメですよ」みたいなことが書いてあったので、すごく気になってしまって…

──それは気になりますね…。今の居候状態だと手当に影響があるかパートナーさんから役所に確認してもらってもいいかもしれないです。
ちなみに家を出てパートナーさんにはたまにしか会えなくなっても、久保さんは大丈夫ですか?

久保:私は大丈夫です。

──それだったら一度役所で相談して、場合によっては生活保護などで生活基盤を整えてから一緒に住む流れでもいいかもしれないですね。

久保:なるほど…!

──もし役所が難しかったら、うちでも寮付きのお仕事も紹介できます。
ただ、今のお住まいの近くには求人がないので、まずは役所に相談して、近くに住む場所と仕事がないか探してもらう方がいいかと思います。

久保:ああ、話して気が楽になりました。この話は全く誰にもできなかったんですけど、お話して前に進める気がしてきました。彼とも話してみます。どうもありがとうございます。

──良かったです。これからは久保さんとパートナーさんのためにぜひ人生を歩んでください。お話をお聞かせいただいてありがとうございました。

後日談

その後しばらくして、久保さんから「家と仕事が決まった」と連絡をいただきました。

ハローワークに相談に行き、以前正社員をしていた業界での仕事が決まったそうです。

職場がある場所は、パートナーさんの家にも行きやすく、久保さんにも縁のある地域で、4月に入寮して新生活をスタートされるとのことでした。

自立支援センターの方に同行していただいて、役所で必要な手続きもできたことが分かり、スタッフ一同安堵しました。

借金もある中、住所不定状態で身分証を失くしたことから久保さんの不安は膨れ上がっていましたが、問題を長期間放置せずに、勇気を出して対処されたことが功を奏したのかと思います。

久保さん、お身体に気をつけて新たな生活を送ってください!

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